天文検定問題 その1

大問1

我々の住む地球は、宇宙では太陽系というエリアに所属している。
その中心に位置するのが太陽である。太陽は、太陽系の全質量 (水星~海王星までの惑星、冥王星等の準惑星、イトカワ/リュウグウ等の小惑星) を含めた質量のうち99%を占めている。

太陽の表面温度は約(①)℃であり、中心温度は約(②)万℃である。太陽の中心では発生した熱が、太陽表面に届くまでには約1000万年かかると言われている。
太陽の表面を観察すると暗い部分があり、これを黒点と呼ぶ。黒点を良く観察すると、(A)と呼ばれる暗い部分と、(A)の周りにあり、少し暗くてやや温度が高い(B)と呼ばれる部分がある。複数の黒点が集まったものを「巨大黒点」と呼ぶ。

実は、太陽も自転をしている。HとHeのガスから出来ているため、その自転速度は赤道付近と北極・南極付近で自転周期が異なるのである。自転周期が早いのは、(C)である。

水星や金星など、地球の公転軌道の内側に位置する惑星を(D)と呼び、火星や木星など、公転軌道の外側に位置する惑星を(E)と呼ぶ。(D)や月は、昼間太陽の前を通ることがある。これを(F)と呼ぶ。特に金星が(F)する場合、金星の見かけの大きさは太陽の30分の1なので、小さい米粒みたいなものが太陽の前を通り過ぎるのを見る事が出来る。太陽からは紫外線が放射されているので、直接見るのではなく、太陽眼鏡を着用して観察すべきである。

問1. 空欄(①), (②)に入る数字のうち、最も正しい組み合わせはどれか?
 (i) ①4000℃, ②1600万℃
 (ii) ①6000℃, ②1600万℃
 (Ⅲ) ①4000℃, ②2000万℃
 (Ⅳ) ①6000℃, ②2000万℃
問2. 空欄(A), (B)に入る言葉を答えよ。
問3. 空欄(C)に入るのは、「赤道付近」「北極・南極付近」のどちらか?
問4. 空欄(D)~(F)に入る言葉を答えよ。

大問1 答え

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問1. (ii) ①6000℃, ②1600万℃
問2. A. 暗部, B. 半暗部
問3. C. 赤道付近 (北極・南極付近は30日に対し、赤道付近は25日と速い)
   高緯度程自転が遅い回転を「差動回転」と呼ぶ。ガス星によく見られる。
問4. D. 内惑星, E. 外惑星, F. 太陽面通過

大問2

宇宙は広大であるため、我々が日常使う距離の単位を天文学で使用すると、桁が大きくなるため非常に扱いづらい。そこで、天文学では距離を改めて定義している。

天文学で使用する距離の単位は3つある。1つ目は光年であり、光が一年に進む距離である。光年はly [Light Yearの略]と表記する。2つ目は地球と太陽の距離であり、これを(A)という。AU [Astronomical Unitの略]と表記する。そして、3つ目が年周視差から算出される(B)である。我々が両目で物の距離を測れるのは、左目と右目の両方を使っているからである。これを「視差」という。これを応用して、地球と天体との距離を測っている。

※ケプラーの第1法則から、地球は太陽を焦点とする楕円軌道を描いているが、ここでは説明を簡単にするために円軌道としている。

地球は太陽の周りを約1年をかけて1周している。地球が1年かけて太陽の周りを回った時の視差なので「年周視差」と呼ぶ。この時、年周視差が1秒角となる位置に測定したい星を配置したときの太陽との距離を(B)と呼ぶのである。角度の単位である1度の60分の1を1分角と言い、1分角のさらに60分の1を1秒角と定義している。

(B)の定義

1AU、(B)を光年で表すと、それぞれ
1AU=(C)ly、1(B)=(D)ly
となる。ちなみに、1AUは地球の直径の大体104倍である。

これらの距離を定義したことで、色々な星の距離が表しやすくなる。太陽から一番近い恒星であるケンタウルス座の(E)は4.3光年であり、2番目に近い恒星であるへびつかい座の(F)は5.9光年となる。(E)は3つの星が重なった3重星になっており、その中で地球から最も近い星は「近い」という意味で(G)と呼ばれている。

全天88星座を構成する星の中で最も明るい星とされている(H)ですら、8.6光年と遠い位置にある。

星の明るさを議論する上で、明るさを厳密に定義する必要がある。同じ明るさを持つ物体であっても、遠くにある物体程暗く見える。これでは、明るさを基にした議論が正しくできない。そこで、等級という概念を定義する。地球から天体を見たとき、見たまんまの明るさを「見かけの等級」と呼び、その天体を10(B)の位置に持ってきたときの明るさを(I)と呼ぶ。また、明るさの基準の取り方によって、ベガ等級やAB等級、太陽の明るさを基準にした太陽光度などの種類が存在する。

惑星は光を発していないが、等級という概念を使えばその見かけの明るさを定義する事が出来る。太陽系の惑星のうち、最も明るい惑星は(J)である。これは、-1等級である(H)よりも明るい-4等級である。ちなみに、太陽は-27等級である。

問1. 空欄(A), (B)に入る言葉を答えよ。
問2. 空欄(C),(D)を有効数字3桁で求めよ。ただし、以下の条件とする。
 ・太陽から出た光が地球に届くまで、8分19秒かかるものとする
 ・1AU = 1.49×108km、tan(1秒角)=4.84×10-6 とする
問3. 空欄(E)~(H)に入る星を答えよ。
問4. 空欄(I)に入る言葉を答えよ。
問5. 空欄(J)に入る惑星を答えよ。

大問2 答え

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問1. A. 天文単位, B. パーセク (pcと略す。これは「parallax(視差)」と「arcsecond(秒角)」を組み合わせた言葉である)
問2. C. 1.58×10-5 (ly), D. 3.26 (ly)
問3. E. α・ケンタウリ, F. バーナード星, G. プロキシマ・ケンタウリ, H. シリウス (ちなみに、プロキオンは11.5光年)
問4. I. 絶対等級 (ある天体が10pcの位置にあるとしたときの明るさ)
問5. J. 金星 (地球に近いほど明るく見えるので、可能性のある候補は金星と火星。金星は-4等級、火星は-3等級となる)

大問3

宇宙には巨大な質量を持ち、光すら脱出出来ない天体が存在する。それがブラックホールである。ブラックホールの境界面を(A)と呼び、ブラックホールの半径をある物理学者の名前を用いて(B)半径と呼ぶ。また、ブラックホールの中心を(C)と呼ぶ。ブラックホールは、中国では黒洞と呼ばれている。

(B)はニュートンのエネルギー保存則からざっくりとその値を求める事が出来る。(ただし、正確ではないので注意)
ブラックホールの質量をM、(B)半径をR、万有引力定数をG、光速をcとして、無限遠方ではエネルギーが0になる事を考えると、
R = (D)となる。

縦軸に個数、横軸にブラックホールの質量を取った質量分布図をみると、ある特定の質量の範囲だけ、ブラックホールが全く存在しない領域がある。これを(E)と呼ぶ。
ブラックホールの質量分布のうち、質量が小さいエリアに所属するブラックホールを(F)、質量が大きいエリアに所属するブラックホールを(G)と呼ぶ。(F)は太陽の10倍程度の質量を持ち、(G)は太陽の数100倍~数10億倍もの質量を持つ。

アインシュタイン方程式を特定条件下で解を求めることで、ブラックホールの種類に関する定理を得ることが出来る。これを『ブラックホール唯一性定理』という。この定理により、外部からブラックホールで観測可能な物理量は質量・電荷・角速度だけとなる。つまり、ブラックホールに吸い込まれると、これら以外の物理量は観測できなくなる。これを「無毛定理」と呼ぶ。「無毛定理」により、分類分けをすると以下のようになる。

電荷角運動量
(H)なしなし
(I)ありなし
(J)なしあり
(K)ありあり

また、ブラックホールを観測するプロジェクトも世界各地で活動しており、世界で初めてブラックホールを撮影する事に成功したプロジェクトを(L)と呼ぶ。下にその写真を示す。明るく輝く高音のガスに囲まれた中央の黒い部分がブラックホールである。

世界で初めて観測されたブラックホール
引用元 https://www.miz.nao.ac.jp/eht-j/c/pr/pr20220512.html

問1. 空欄(A)~(C)に入る言葉を答えよ。
問2. 空欄(D)を求めよ。
問3. 空欄(E)~(G)に入る言葉を答えよ。
問4. 空欄(H)~(K)に入る言葉を以下の中から答えよ。
 [a. ライスナー=ノルドシュトルム、b. カー、c. カー=ニューマン、d. シュバルツシルト]

大問3 答え

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問1. A. 事象の地平面, B. シュバルツシルト (半径), C. 特異点
問2. D. 2GM/c2
  mc2/2 – GmM/R = const (=0)より
問3. E. ブラックホール砂漠, F. 恒星質量ブラックホール (恒星ブラックホール), G. 超大質量ブラックホール
問4. 下記テーブルに記載
問5. L. EHT (イベント・ホライズン・テレスコープ)

電荷角運動量
H. d(シュバルツシルト)なしなし
I. a(ライスナー=ノルドシュトルム)ありなし
J. b(カー)なしあり
K. c(カー=ニューマン)ありあり


大問4

元素や星座、星の語源を見てみよう。

元素記号Seの元素セレンは、ギリシャ神話の月の女神セレーネから来ている。ローマ神話では(A)に相当する。また、ラテン語で「土地」や「大地」という意味のテッラを由来とする元素は(B)である。元素周期表で見た時、(B)の真上に位置するのがSeであり、大地の上に月が位置するかのように名付けられた。

夏の大三角として有名なアルタイル・ベガ・デネブの語源は全てアラビア語から来ている。アルタイルは(C)、ベガは(D)、デネブは(E)という意味である。アルタイルは彦星、ベガは織姫としても知られている有名な星である。ベガは織女星 (しゅくじょせい)という別名もあり、地球から25光年も離れている。

他にも、中国では狼の目に例えて天狼星 (てんろうぼし) として呼ばれ、ギリシャ語で「焼き焦がすもの」という意味がある(F)や、(F)に先駆けて東の空に昇る事から、ラテン語で「犬に先立つもの」という意味の(G)といった星もある。また、輝星星表のカタログ番号を使って、(F)は”HR2491″、(G)は”HR2493″とも表記される。このように、1つの星をとっても世界中で様々な表現方法があるのである。

星座の名前はギリシャ神話から来ている。
例えば、半人半馬ケイローンの姿を模した(H)座や、ポセイドンの息子であるオリオンを毒針で殺した生物を模した(I)座がある。
(I)座が地平線を登ってくる時間に、オリオン座はまるで避けるように地平線上に沈んでいくのだ。(I)座は独特なS字カーブを描いており、日本では瀬戸内地方の漁師が釣り針に見立てて魚釣り星 (うおつりぼし) と呼んでいた。(I)座のα星は、ギリシャ神話の戦神アレス(火星)のように赤い色から、「火星に対向する物」という意味で(J)と言う。(J)は日本各地では赤星、山口や九州地方では酒に酔って顔が赤くなることに見立てて酒酔い星と呼んでいた。

星座の逸話も紹介しよう。
秋の星座には、(K)座、(L)座、(M)座、(N)座、(O)座、(P)座がある。(K)はWの形をしており、”現在の”北極星を見つけるための手がかりとして使われている。(L)はエチオピアの王(M)と王妃(K)の間に生まれた子供である。美しい(L)が自慢だった(K)はある時、「私の娘は海の精霊より美しい」と豪語した。それが海の王ポセイドンの怒りを買い、エチオピアに洪水と災いを引き起こし、「災いを鎮めるには(L)をケートス(N)に捧げろ」と告げた。なすすべが亡くなった(M)はお告げに従って(L)をいけにえに捧げたところ、そこに偶然、英雄(O)が白馬(P)に乗って通りかかった。(O)はゴルゴン三姉妹の1人・怪物メドューサを退治した帰りであった。ちょうど腰にぶら下げていたメドューサの首により、ケートスは石になって無事(L)助かったのである。その後、2人は結ばれてハッピーエンドとなった。

ちなみに、(O)のひ孫であり、幼名を「アルケイデス」と呼ばれていたのは(Q)である。

先ほど出てきた北極星とは、北極から宇宙に向けて一直線に線を伸ばしたとき、一番近い位置にある恒星を指すが、「現在の」という言葉を共に用いた。これは、地球は自転・公転の他に(R)と呼ばれる運動をしているため、北極星の位置が年々変化しているためである。地球をコマに例えると回転軸がくるくる回る動きに例えられる。この動きを(R)と呼ぶ。北極星は2万6千年周期で変わっており、”現在の”北極星はこぐま座の(S)であるが、約1万3年前はこと座のベガであった。今から8千2百年後はわし座の(T)になるとされている。他にも、約4千7百年前はマイナーな星であるりゅう座の(U)が北極星だった。

問1. 空欄(A)に入る言葉を答えよ。
問2. 空欄(B)に入る元素記号を答えよ。
問3. 空欄(C), (D), (E)に入る言葉をそれぞれ次の中から選べ
 [a. 尾、b. 飛ぶ鷲、c. 落ちる鷲]
問4. 空欄(F), (G)に入る星を答えよ。
問5. 空欄(H), (I)に入る星座を答えよ。また、(J)に入る星を答えよ。
問6. 空欄(K)~(P)に入る星座を答えよ。
問7. 空欄(Q)に入る人物を答えよ。
問8. 空欄(R)に入る言葉を答えよ。また、(S)~(U)に入る星を答えよ。

大問4 答え

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問1. A ルナ
問2. B テルル (Te)
問3. 下記テーブルに記載
問4. F. シリウス, G. プロキオン
問5. H. いて座, I. さそり座, J. アンタレス
問6. K. カシオペア (カシオペヤ), L. アンドロメダ, M. ケフェウス, N. くじら, M. ペルセウス, P. ペガスス
問7. ヘルクレス (ヘラクレス) (世界一大きいカブトムシはヘラクレスオオカブトであり、2番目に大きいのはネプチューンオオカブトである。ネプチューンとは、ローマ神話の海の神様であり、ギリシャ神話のポセイドンと同一視されている)
問8. R. 歳差運動, S. ポラリス, T. デネブ, U. ツバン (トゥバン) (ちなみに、ポラリスはラテン語で「極」という意味) 

番号選択肢
C (アルタイル)b. 飛ぶ鷲
D (ベガ)c. 落ちる鷲
E (デネブ)a. 尾

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