天文検定問題 その4

大問1

太陽からは様々な物質が噴き出してるが、人間の目ではそれを観測する事が出来ない。人間が視認できる電磁波の波長域を可視光というが、紫外線や赤外線、X線といった可視光ではない電磁波は専門装置を使って観測する。これらの情報を得る事で、太陽を含め様々な天体の情報を得る事が出来るのである。

光 (電磁波)を分光器 (プリズムや回折格子) に通して、波長分布を記録したものを(A)と呼ぶ。太陽光の(A)を専用装置を使って記録すると、以下のように暗線が見られる。これ(B)と呼ぶ。

(B)を発見したのは科学者の(C)と(D)である。横軸は波長であり、波長が長い方からIとJを除くA~Kまでのアルファベットが割り当てられている。

光り輝いている太陽の表面を光球と言い、光球より約2000km上空には「コロナ」と呼ばれるガス領域が存在する。
コロナの温度は約100万℃もあり、これは光球の約6000℃に比べて遥かに高い。まるで沸騰する水の水面よりも水蒸気の方が高い状況が起きているのである。これを(E)と呼ぶが、現在ではその謎はまだ解明されていない。有用な説として、太陽表面から熱以外のエネルギーが伝わり、コロナ領域で熱エネルギーに変換されていると考えられている。
コロナは非常に高温のため、存在する分子はほぼプラズマとして存在し、太陽磁場の影響を受けやすくなっている。
コロナはその輝き方によって、様々な分類がされている。皆既日食等で観測されるコロナは白色光コロナと分類され、それ以外にも(1)コロナ、(2)コロナ、(3)コロナという分類がある。

・(1)コロナ
 太陽から放出された光が、自由電子によって散乱され輝いているコロナ。
 コロナ中のプラズマに存在する、電離した大量の自由電子によって太陽光が散乱されているのである。
 自由電子による電磁波の散乱を(F)と呼ぶ。(F)は光の波長に全く依存せず、平等に散乱する。
 そのため、吸収線を持たない連続光となっている。ちなみに、ガスからX線が放出されている。

・(2)コロナ
 太陽近傍や宇宙空間に存在する微細な大量のダストによって、太陽光が散乱されて輝いているコロナ。
 ダストの散乱光によって、(B)が見える。
 黄道光 (黄道に沿って太陽を中心に帯状に見える淡い光の帯の事)がダストの散乱光によって見えるため、(F)はそのまま黄道光に繋がっている。

・(3)コロナ
 高温コロナ中でプラズマになった様々なイオンによって放射される輝線で輝いているコロナ。
 太陽表面に近く、連続光として光る 

太陽コロナを世界で初めて、内側から観測することに成功した観測機が(G)である。(G)は複数回の減速スイングバイを経て、太陽に近づくことに成功した。コロナは太陽独自の現象ではなく、太陽以外の恒星にもコロナが存在することが知られている。

太陽表面には、(H)と呼ばれるコロナの温度が平均よりも冷たくて密度が低い領域が存在する。そして、太陽の極域 (きょくいき)には(H)から噴出しているように見える明るい羽毛上の構造が見られる。これを(I)と呼び、(I)は太陽の両極の双極磁場の磁力線構造によって生じている。

また、太陽表面ではフレアと呼ばれる爆発現象が見られる。これは、複雑に交差する磁力線がより簡単な磁力線構造へつなぎ変わる過程で、蓄えられた膨大な磁場のエネルギーが解き放たれることで生じる。フレアなどの太陽活動により、太陽から大量のエネルギーやガスが宇宙空間へ放出される。コロナにある物質が放出されるため、この現象を(J)と呼んでいる。(J)の中には、地球近傍で1000km/sに達する物も存在する。(J)が地球に到達すると、地球磁気圏のバランスを崩す事がある。これを(K)と呼ぶ。

問1. 空欄(A), (B)に入る言葉を答えよ。
問2. 下線部①について、暗線が見られる理由はなぜか?
問3. 空欄(C),(D)に入る人名を答えよ。
問4. 空欄(1)~(3)にはアルファベット1文字が入る。それぞれ答えよ。
問5. 空欄(E)~(J)に入る言葉を答えよ。
問6. 下線部②について、具体例を1つ答えよ。

大問1 答え

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問1. A. スペクトル, B. フラウンホーファー線
問2. 大気中の元素が、それぞれ対応する特定波長の光を吸収するから
   C. キルヒホッフ, D. ブンゼン (C,Dは順不同)
問3. 1. K, 2. F, 3. E (それぞれ、Kontinuierlich (ドイツ語で「連続的」), Fraunhofer, Emissionの頭文字から取られている)
問4. E. コロナ加熱問題, F. トムソン散乱 (電子散乱), G. パーカー・ソーラー・プローブ, H. コロナホール, I. ポーラープルーム (極域プルーム), J. CME [別名:コロナ質量放出] (Corona Mass Emmisionの略), K. 磁気嵐
問5. ・長距離通信の電波通信に障害が生じる
   ・宇宙飛行士が被ばくする
   ・人工衛星が壊れる危険性がある
   ・オーロラがより活発に見える 等

大問2

夜空の星々は、宇宙空間に存在する星間ガスが集まって原始星になり、成長して主系列星になる。

原子星になる前に、星間ガスや塵が集まって星が生まれる場所、もしくは星が死んでいく場所を星雲という。星雲は、『星間ガスや塵が近くや内部にある明るい星によって照らされて光っている』(A)と、『光を発していない』(B)に分けられる。
有名な(A)には下図に示す(C)がある。

地球からも場所や条件によっては肉眼で見る事ができる。写真にとると、H2のガスが星の光を受けて光っているために赤やピンク色に見える。(C)の中心部を見ると、(D)と呼ばれる4つの星が光っているのが見える。

有名な(B)には、下図に示す(E)がある。(E)はその形がある動物の頭の形に似ている事から命名された。

(B)は天の川銀河の方向に多く、天の川銀河から離れると少なくなる。光を吸収するが、天の川方向では3000光年進むごとに、1等級 (約2.5倍)程暗くなる程度である。また、様々な分子が含まれており、これはミリ波やサブミリ波で観測する事が出来る。

他にも、星が死んでいくときに自身のガスを宇宙に吐き出した星雲がある。有名なものに、下図に示す(F) (M57)がある。M57や、わし座のNGC6751は「惑星状星雲」とも呼ばれている。昔、望遠鏡で見た際に点ではなく広がって見えた事から、惑星のように見えた事に由来する。

引用元 https://science.nasa.gov/mission/hubble/science/explore-the-night-sky/hubble-messier-catalog/messier-57/

さらに、(A)は2つに分類する事ができる
・(G)
 赤色に光っているように見える。(C)はこれに該当する。
・(H)
 青く光っているように見える。

また、かに星雲 (M1)も星雲の1つであり、星が死んだあとにできる超新星残骸に分類される。

問1. 空欄(A)~(I)に入る言葉を答えよ。
問2. 下線部①について、赤く光る理由は何故か?
問3. 下線部②について、青く光る理由は何故か?

大問2 答え

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問1. A. 散光星雲 (さんこうせいうん), B. 暗黒星雲, C. オリオン大星雲, D. トラペジウム, E. 馬頭星雲, F. こと座の環状星雲, G. 輝線星雲, H. 反射星雲
問2. ①星雲内の電離したガスが再結合する際、赤色の波長をもつ光を放射するから
問3. ②青色の光をよく反射する星間塵が、近傍の星から受ける光を反射しているから

大問3

星々は、自身の性質や周りの天体との関係で色んな分類がされている。

見かけ上は1つの星に見えるが、実際には2つ以上の星が重なっている事がある。重なった2つの星を二重星と呼ぶ。重なってる星の個数によって、三重星、四重星、、、と呼ぶ。
二重星の例として、はくちょう座β星(A)がある。金色の星と青い星の2つから構成されており、宮沢賢治は『銀河鉄道の夜』の中で、この2つの星をそれぞれトパーズの星とサファイアの星になぞらえている。
また、2つの星同士が互いの重力によって、両者の共通重心の周りを軌道運動している場合、これらの星を(B)と呼ぶ。
(B)の例として、アンドロメダ座のγ星のアルマクや、おおぐま座の北斗七星を構成する(C)とアルコルがある。アルコルは「死兆星」とも呼ばれている。古代ギリシャやローマでは、(C)とアルコルを視力検査に使っていた。この二重性が分かれて見えるかどうかで視力を判断していた。視力低下を老化のサインと捉え、死が近づいているとみなしていたのである。

夜空に瞬く星の中には明るさが変化する星があり、(D)と呼ばれている。(D)には、星自体が膨張や収縮を繰り返して明るさが変わる(E)と、連星がお互いに隠し合って明るさが変わる(F)がある。

(E)は、恒星が最終進化の段階で寿命を全うする直前に星が膨張や収縮を起こす事が原因である。(E) の例として、ラテン語で「びっくり」という意味のくじら座ο星(G)がある。(G)は世界で初めて観測された(D)である。他にも、ケフェウス座のμ星も(E)に相当する。その綺麗な色合いから、ウィリアム・ハーシェルは(H)と命名した。

(F)は、(A)がお互いがお互いを隠し合うことによって、見かけの明るさが変わることが原因である。
(F)の例として、アラビア語で「悪魔」という意味のペルセウス座β星(I)がある。

(E)や(F)の他にも、星表面で爆発現象が起きて明るさが変わるタイプの(D)がある。これを(J)と呼ぶ。後ほど解説する、超新星も(B)の一種である。

問1. 空欄(A)~(F)に入る言葉を答えよ。
問2. 空欄(G)~(I)に入る星を答えよ。
問3. 空欄(J)に入る言葉を答えよ。

大問3 答え

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問1. A.アルビレオ B. 連星, C. ミザール, D. 変光星, E. 脈動変光星, F. 食変星
問2. G. ミラ, H. ガーネットスター, I. アルゴル
問3. J. フレア星 (閃光星)

大問4

古来から、多くの人が宇宙の観測や研究に携わってきた。昔の科学者を以下に書き記す。

・(A)
 紀元前384年~紀元前322年の古代ギリシャの哲学者。プラトンの弟子。
 地球は球体で、宇宙の中心であると説いた。

・アリスタルコス
 紀元前310年~紀元前230年の古代ギリシャの天文学者。
 古代のコペルニクスと呼ばれる。
 太陽と月の大きさを推測し、地動説を提唱した。
 (B)の天動説よりも先に、地動説を提唱している。

・(B)
 紀元前190~紀元前120年の古代ギリシャの天文学者。
 春分点を発見したり、三角法による測量を行った。
 光度等級を定義し、世界で初めて構成を1等星から6等星までの分類をした。
 天動説を支持した人物でもある。

・(C)
 83年~168年の古代ローマの数学・天文学者。英語名は「トレミー」。
 アレクサンドリアで活躍した。
 著書『アルマゲスト』『テトラビブロス』等を著した。
 周転円 (しゅうてんえん)と呼ばれる概念を用いて天動説の理論を立てた。
 また、現在使われている全天88星座の大元になるトレミーの48星座を作成した。

・(D)
 1473年~1543年のポーランド出身の天文学者。
 著書『天球の回転ついて』を著したり、1543年に『天球回転論』出版し、当時主流だった天動説を覆す太陽中心説 (地動説)を初めて公表した。

・(E)
 1546年~1601年のデンマークの天文学者。
 (D)を称賛し、超新星や彗星の観測からアリストテレスの考えを反証した。

・ガリレオ
 1564年~1642年のイタリアの天文学者。
 「天文学の父」と呼ばれている。
 自ら作成したガリレオ望遠鏡を使い、木星の衛星や金星、月のクレーター、太陽の黒点などを発見し、1610年に(F)を著した。

・(G)
 1571年~1630年のドイツの天文学者。
 1596年、『宇宙の神秘』を出版した。
 (E)の死後、彼のデータを使って惑星軌道に関する3つの法則を発見した。(F)の法則とは以下のものである。

  1. 惑星は太陽を焦点とする楕円軌道を公転している
  2. 惑星は太陽と惑星を結ぶ線分が一定の面積となる (→面積速度一定の法則とも言う。ちなみに、惑星と衛星の間にも成り立つ)
  3. 惑星の軌道長半径の3乗と公転周期の2乗の比は一定となる

・アイザック・ニュートン
 1642年~1727年のイングランドの数学者・物理学者・天文学者。
 1687年に和名を『自然哲学の数学的諸原理』という著書(H)を出版した。

・ウィリアム・ハーシェル
 1781年、太陽系の惑星である(I)を発見する。
 土星の衛星ミマスとエンケラドゥスを発見したり、天王星の衛星ティターニアとオベロンを発見している。

・(J)
 1746年~1826年のイタリアの天文学者。
 歴史上はじめて小惑星を発見した。現在は準惑星に分類されている(K)である。

・(L)
 1812年~1910年のドイツの天文学者。
 1846年、太陽系の惑星である海王星を発見した。
 当時、未知の惑星がある事をベルリン天文台に報告したコルヴァン・ルヴェリエの報告を受け、海王星を発見に成功した。

・(M)
 1906年~1997年のアメリカの天文学者。
 1930年、冥王星を発見した。冥王星の英語名『Pluto』を『冥王星』と訳したのは(N)である。

問1. 空欄(A)~(E)に入る人物名を答えよ。
問2. 空欄(F)に入る書名を答えよ。
問3. 空欄(G)に入る人物名を答えよ。
問4. 空欄(H)に入る書名を答えよ。
問5. 空欄(I)に入る惑星を答えよ。
問6. 空欄(J)~(N)に入る人物名を答えよ。

大問4 答え

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問1
A. アリストテレス, B. ヒッパルコス, C. プトレマイオス, D. (ニコラウス・)コペルニクス, E. ティコ・ブラーエ
問2. F. 『星界の報告』
問3. G. (ヨハネス・)ケプラー
問4. H. 『プリンキピア』
問5. I. 天王星
問6. J. (ジュゼッペ・)ピアッツィ, K. ケレス, L. (ヨハン・ゴットフリート・) ガレ, M. (クライド・)トンボ―, N. 野尻抱影 (のじりほうえい)
 ピアッツィは後に功績をたたえられ、通算1000番目の小惑星は「ピアッツィア」と命名された。

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